趣意書

「日本外来精神医療学会」趣意書

 わが国の精神医療における外来診療の果たす役割と国民の期待は、時代とともに大きく変わりつつあります。
 薬物療法の進歩と精神病院の開放化・精神保健福祉活動の普及による外来精神医療の進展は,入院医療と違って利用者が生活世界を失わずに療養を受けられる可能性を開いてきました。また,いわゆる精神医学の社会化に伴い、かつては精神医学医療の対象とはなり難かった生活上の困難や人間関係上の諸問題といった、いわば病なき病と形容しうるような問題の解決までもが、昨今では精神医療に託されてきています。
 このように精神医療の利便性が向上することは国民の精神健康上望ましい傾向ですが、その期待に応えられる外来臨床の実践学として体系と技法を、精神医学はまだ充分に開発していないのが現状であります。
 情報テクノロジーの進歩とグローバリゼーションを加速させる新世紀は,人の暮らしや人間関係のあり様を変化させ,心の病の構造や内容をもまた一層変貌させていくものと推量されます。時代のニーズに対応すべく,病院精神医療では地域社会の文化や生活に根ざした地域精神医療や精神保健福祉や救急ネットワーク体制の充実、さらには院内療養におけるリハビリテーション技術やアメニティ、QOLの向上がきたいされる中で、外来医療においても新しい外来機能の研究・開発を推進し,外来の独自性をもった臨床学を確立していくことが、21世紀に課せられた精神医学の使命かと思われます。
 そこで,外来精神医療・精神保健・福祉・相談に携わる方々が職域・職種を越えて集い,外来臨床の実践知を交換し研磨し合うことにより,わが国の外来精神医療の発展を目指す臨床の学術団体として「日本外来精神医療学会」を設立した。



「日本外来精神医療学会」設立委員会